油屋本舗

油屋本舗

元潤滑油 専門職(※守秘義務多々あり)が、皆さんの知らないオイル/添加剤の本当の話/真実/裏話を語ります。

 

■工業グリスに関してのお問い合わせ

先日、工業用(>工業用/作業用機器)のグリスについて、ご質問をいただいていました。

直接は、関係がない(≒対象機種)が無いのですが、このご質問に対して回答することで、けっこう基本的なポイントを説明できると思いますので、ブログの方で回答>UPしておきます。

(オートバイ/4輪車/自転車に関してのグリスのポイントも、かなり掴めると思います。)

■ご質問内容↓

「一つだけ教えてくださいませんか。
仕事でグリスの大手メーカーから極圧グリスを多量に購入しておるのですが、最近職人が変わったせいで、潤滑の持ちが悪く今まででは10回以上ストローク出来ていた道具がモリブデンばかり添加してくるせいで、ちょう度が上がり軟らか過ぎて2~3回で塗り直す様に成り困っているんです。
道具と言うのは土木用の岩盤を破砕するセリ矢と言う楔の原理を用いた自社開発の道具なんです。
(グリス屋さんじゃないでしょうかと思い、藁おも掴む思いで伺っております)
固くて油膜を保持して、温度上昇にも水にも強い、何時までも滑らかに滑るグリスはご存知無いでしょうか。」

■回答&説明&補足

ご質問の対象機器は、道路工事などでよく見かける「ダダダッ!」とアスファルトなどを粉砕する切削機の応用機器のようです。

具体的な処理/塗布箇所のイメージがわきませんし、どのくらいの実加重/実シュウ動速度なのかが分からないのですが、大方汎用グリスの延長でOKだと思われます。
ですから、今回のケースでは、汎用グリスのちょう度違い&性状性能違いでOKだと思われます。

グリスの選択ポイントは、
・増ちょう剤による(いわゆる)ベースグリスの基質の選択。
・ちょう度(≒グリスの粘度)の選択。
・性状性能(特にμ特性や耐摩耗性)の選択。
この3つになります。

(エンジンオイルの選択ポイントと同じようなもの/ことです。)

まず、増ちょう剤による(いわゆる)ベースグリスの基質の選択ですが、
単純にμ特性を落として&頻度の高いメンテナンスを行うのでしたら、リチウム石鹸基質(※複合含む)の方が、総じてμ特性は取りやすいのですが、今回の場合は、熱剪断性/耐水性にアドバンテージのあるウレア系基質を選択する方がよいと思います。

(ウレア系グリスがどんな目的に対してもアドバンテージがあるわけでなく、普通の配合処方ですと配合添加剤の効きが悪かったり、トラクション性が悪かったりで、μ特性自体は不利になることが多いです。一番良く使用されるのは、重機等のキャタピラ部分ですから、想像いただけると思います。レース用や高性状性能を謳うウレア系グリスの場合は、ちょう度を落としたり、配合添加剤を工夫して低μ特性をサルベージするケースが多いと思われます。(弊社も同じです。))

ベース油は、高性状性能を謳うモノなら、ほとんど合成油(エステル/PAOなど)ベースがほとんどだと思いますから、そんなに心配することは無いと思われます。
※希に鉱油ベースのモノがありますから、最低限の注意は必要です。(それは選択肢から避けた方が良いでしょう。)

次に、ちょう度の選択です。
自動車/オートバイ/自転車各部に使用される(選択される)グリスのちょう度は、#2がほとんどです。
といっても、#1に近いモノや#3に近いモノも、いろんな実ちょう度の製品があるので、ここは注意して下さい。

レース用/高性状性能グリスの場合は、ちょう度を少し下げて#2.0~#2.5ぐらいにしてあるモノが多い印象です。
弊社グリスも、添加剤を希釈することで、#2のミッドレンジぐらいまでちょう度を落として(≒(イメージとしては#2.5)低μ特性をアシストしています。

※ただし、ウレア系基質であっても、ちょう度が#2のミッドレンジを下回ると、瞬間的な高加重には、あっさり剪断してしまうので、注意して下さい!

今回の場合は、ちょう度が#2のハイレンジから#3ぐらいの方が良いと思われます。
(ただし、現在使用しているグリスのベース基質と実ちょう度が分かりませんので、言い切るところまでは言えませんね。)

最後に、配合添加剤(メインとなる添加剤)です。

先に気になったのは「極圧グリスなのに、モリブデンの配合量が増えて云々」ってところです。
極圧性剤は、SP剤/EP剤による反応膜によるものになります。
また、SP剤/EP剤と(概して)モリブデンは、ストライベック曲線上での作用するエリアが異なります。
>SP剤/EP剤は境界潤滑領域の直前、Moは混合潤滑領域全般です。

高い極圧性が要求されるようなので、かなり高い連続した高加重が与えられると想定しましたし、ちょう度も#3ぐらい必要なんじゃないか?と思った次第です。

余談ですが、僕らは、余程低単価品以外、基剤メーカーから購入した基剤をポンとそのまま配合処方して済ますことはありません。
Mo類(特に有機Mo類)は、MoDTC、MoDTP、MoP、MoC、その他基剤を、狙った性状に合わせて有機Mo自体配合処方します。それぞれ、星の数ほど選択肢がありますし、同スペックでもメーカーによって差がありますから、無限に近いぐらいのイメージで「製品としての有機Mo」を造れるんです。

今回の場合、単純に有りもの(基剤メーカー払出しの基剤)を単に配合しただけでは、ちょう度も大幅に落ちてしまいますし、何より低μ特性等の性状性能も期待できないと思われます。

弊社グリス(※この場合はEVO.BOOST-Grease)の場合は、混合潤滑領域全般に作用しますが、直に後半部分に(より)特化した特殊有機Moを配合してあります。
SP剤/EP剤等の極圧性剤のppmを上げてしまうと、μが落ちない(>他の添加剤の性状を阻害する)上に、耐摩耗性が大きく落ちてしまうので、弊社の場合、むしろ極圧性剤のppmを落として、特殊有機Moによる混合潤滑領域の(左側への)大幅な拡大を処方してあります。
粘性の高いグリスへの配合処方ですから、低μの絶対値は0.05程度まで悪化してしまいますが、それでも一般市販品の1/2以下だと思われます。

今回の場合は、要求ちょう度がはっきりしませんので、一度、弊社EVO.BOOST-Grease&EVO.BOOST(原液)(※セットの使用が必要になります)を試用していただいて、まずちょう度を把握していただきたいですね。

同配合処方でちょう度違いは製作可能(※980g最低ロット)ですから、それから決めていただければと思います。

※余談ですが、グリスの配合添加剤のよくある失敗例が、有機Moとフッ素系を同配合処方してあるモノです。
>フッ素は、有機Moのトライボフィルムの密度を著しく下げてしまうので、併用しないのが常識なんです(<僕らからすれば、小学校レベルの話しになります(笑))
ですから、いろんなグリスが一般市販されていますが、上記を選択肢から外すのもポイントになると思います。

PS.
グリス製造メーカーの製品クオリティが安定しないのは、よく分かります。
自分も、ベースグリス分だけは基剤メーカーから購入しているのですが、少し気になることがあると、必ずメーカーに基礎性状表を確認していますが、各項目を都度机上試験>検証確認枝ちぇいるわけではないので、納入メーカーのことを信用するしかないんですよね・・・。(もうソトノヒトですから、もう確認試験する(出来る)環境じゃありませんから。
スポンサーサイト

 
 

Comments


 
<- 04 2017 ->
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
プロフィール

佐式

Author:佐式
Racing TaSK レーシング タスク/有限会社オフィスタスク 代表の藤野隆司です。

皆さんが、日頃見聞きすることはない/できない情報を提供することで、少しでもお役に立てれば!という思いから、「油屋本舗」を開設いたした次第です。

最新トラックバック
全記事表示リンク
アクセス ありがとうございます
FC2ブログ ランキング
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
車・バイク
2375位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
173位
アクセスランキングを見る>>
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロマガ購読者数

現在0人が購読中です

ブロマガ一覧を見る

ブロマガ購読者向けメールフォーム


Archive RSS Login