油屋本舗

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元潤滑油 専門職(※守秘義務多々あり)が、皆さんの知らないオイル/添加剤の本当の話/真実/裏話を語ります。

 

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DLC その2 >「摩擦係数」の落とし穴

(Facebookで宿題出しておきましたが、ペラペラっとはググっていただけましたか?)

DLC関係の話や認識が、混乱してしまうor事実誤認してしまう原因/理由の一つに、
「摩擦係数」の認識ミスがあるんじゃないか?と思われます。

では、順に説明していきましょう(^^)/


■ストライベック曲線

簡単に言ってしまえば、
縦軸=摩擦係数>下へ行くほど摩擦係数が低い/低フリクション
横軸=(粘度n×速度v)/加重Fn>ザックリと「負荷」でいいです。

ちょっとざっくり過ぎるかも知れませんが、分りやすくピストンの状態を例にして説明しておきましょう。

・ピストンスピードが遅い>右寄りへ
・ピストンスピードが速い>左寄りへ
1本の縦線が常に凄い速度で振動していて、それが更に、右へ行ったり左へ行ったりを、これまた凄い速度で行ったり来たりしているイメージでOKです。

で、それぞれ、負荷の大小によって、オイルの受け持っている役割分担があるんです。

・ピストンスピードが遅い時
 >「流体潤滑領域」
  ≒ざっくりいうと、ベースオイル部分が受け持っている領域です。

・ピストンスピードがそこそこ速い時
 >「混合潤滑領域」
  ≒これまたざっくりいうと、オイルに配合されている各添加剤(※特にFM剤)が受け持っている領域です。

・ピストンスピードが鬼高速な時
 >「境界潤滑領域」
  ≒油膜がちぎれて>更に添加剤類の反応膜もぶっ飛んで、オイルではなく、シュウ動部の表面と表面が直接擦れあっている領域になります。
   (潤滑というイメージより、モロに「地」と「地」が擦れあってる状態ですね。)

これで、大雑把でも「ストラベック曲線」をイメージしていただけると思います。


■DLCがいうところの摩擦係数

よくDLCの摩擦係数が、ネット等の情報で見ることが多いと思いますが、ほとんどが、「境界潤滑領域」での摩擦係数のことになります。

ストライベック曲線を思い出してください。/よく見て下さい。

境界潤滑領域のμ(=摩擦係数)は、「混合潤滑領域」のμより、何倍も高いですよね?

ほとんどのリリースは、境界潤滑領域での摩擦係数を上げて、摩擦係数■■実現!○○%摩擦低減!という説明です。
ここに大きな落とし穴があるんです(たぶん皆さんにとって)。

最近ピストンリングにDLC施行された某車を例にすると、
摩擦係数が30~40%低減!といっても、実測値でμ0.4→μ0.3~0.25です。
混合潤滑領域での低μのピーク(≒一番低い値)は、μ0.04~μ0.06程度は、現在当たり前ですから、桁が違う!んですよ!!桁が!!


僕ら油屋(潤滑油技術者)は、境界潤滑の直前までが勝負!になります。
(もちろん、シュウ動部の素材(表面処理含む)に依る境界潤滑領域でのμ低減は、大きく影響してきます。)

一般的にいっても、僕らの世界でも、潤滑油の摩擦係数(μ)は、潤滑油の受け持っている部分だと認識されていると思います。
通常、潤滑油での摩擦係数といえば、摩擦係数が一番低いところ(≒混合潤滑領域の一番低いところ)になるので、境界潤滑領域での(桁違いに高い)μを出したところで、実質的な/実用上的な意味がない訳です。

少し話しから外れますが、
僕らの世界での最近のトレンド(最近のニーズ)は、
1)流体潤滑領域でのカーブを少しでも寝かす。
2)-①混合潤滑領域での低μ値のピークを少しでも下げる。
2)-②混合潤滑領域でのカーブを少しでもフラット化&ワイド化する。
です。

これに加えて、温度レンジへの対応も要求されますので、ホントにかなり大変です・・・。

口で言ってしまえば簡単ですが、実現化/製品化するのは、相当な難易度なんですよ(^^;)


■DLC 摩擦係数の落とし穴

ここまでの説明で、もうお分かりでしょう?

DLC自体では/DLCだけでは、摩擦係数の実数値において、実用上ほとんど意味がない(※全く意味がない訳じゃないですよ)にもかかわらず、
 30%もμが低減するのか!?
 40%もμが下がるのか!?
と、安直に脳内変換してしまうから、まんまと落とし穴にハマル訳です。

施工業者も、施工仲介業者も、重要なポイント/重要な注意点を、はっきり説明しないまま(たぶん、分ってない(笑))、
ええでぇ~!!ええでぇ~!!と、安直にセールスするから、どんどん被害者が続発/続出してしまうのだと思います。

(もう既に、かなりの人数の方が、核地雷踏んでしまっているんじゃないでしょうか?・・・(>_<))






 




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Comments

すごく大まかにはわかりかけ。 
宿題を色々ググりましたが、素人はなかなかキーワードが繋がらないですね。
説明を見て少しイメージすることはできました。

ひとつだけ
>ピストンスピードが鬼高速な時は、30m/sとかの領域になるのでしょうか。
(バイクだとあるとか?)自分の持っているエンジンは最も速そうな想定で
計算が間違ってなければ KT23m/s YZ24.3m/s位でした。 
ということはほとんどが潤滑が受け持っている範囲ということで
基油、添加剤の範囲でカバーできると考えていいでしょうか。
Re: すごく大まかにはわかりかけ。 
> 宿題を色々ググりましたが、素人はなかなかキーワードが繋がらないですね。
> 説明を見て少しイメージすることはできました。
>
> ひとつだけ
> >ピストンスピードが鬼高速な時は、30m/sとかの領域になるのでしょうか。
> (バイクだとあるとか?)自分の持っているエンジンは最も速そうな想定で
> 計算が間違ってなければ KT23m/s YZ24.3m/s位でした。 
> ということはほとんどが潤滑が受け持っている範囲ということで
> 基油、添加剤の範囲でカバーできると考えていいでしょうか。

オイル部分(添加剤含む)で完全にはカバーできないですよ。
パーツが消耗しないことはあり得ない訳ですからね。
分布≒パーセンタイルを、同高負荷下で、いかに減らすかにオイルの善し悪しがある訳です。

ピストンスピードが、音速を超えることは、しょっちゅうあります。
(あんまり常用する/常用する仕様だと、コンロッドが引きちぎれちゃいますが)
KTは、ショートストロークですから、回転数の割にピストンスピードが遅いわけです。
潤滑システムの秀逸性 
 摩擦係数の大小を競うのはあまり意味がありませんよね。境界潤滑状態になり、金属表面の自然酸化膜が破壊して、凝着に至るという最悪の一歩手前の状態で、DLCは自然酸化膜を防ぐ点で優秀で、これが今まで金属には備わっていない自己潤滑性といわれる現象になります。
 ところでさらに秀逸なトライボロジー技術を見つけました。今月の、「プレス技術」を読みましたが、冷間工具鋼、SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。微量の油をぬったセミドライ状態で、摩擦させるとまるでDLCのような自己潤滑性が出るなんて。コーティング費用分コストパフォーマンスが良く、いろんな摺動部品にも使えそうです。
凄い鉄鋼材料 
 それにしても日立金属の高性能冷間工具鋼SLD-MAGICのトライボロジー特性は凄いですね。私も先月の、日刊工業新聞社の「プレス技術」で読みましたが、微量の油を塗ったセミドライ状態で、摩擦させると先端技術のDLCのような自己潤滑性(摩擦係数が下がる)が出るなんて。耐摩耗性もたかいのでコーティング費用分コストパフォーマンスがよく、耐荷重能も相当応力で2500MPaと高強度でベアリングなどのいろんな転動・摩擦・摺動部品に使えそうだ。まさにノーベル賞級の発明だ。
蘇る昔 
それにしても日立金属さんの自己潤滑性工具鋼、SLD-MAGICのトライボロジー特性はインパクトがある。ここは戦時中、国産初のジェット戦闘機のエンジン、ネ-20を海軍航空技術廠が開発しようとして、かじり(凝着、焼付き)に苦しんでいた時にここの安来工場が新合金を開発して、なんとか実用化に成功したとのこと。この技術を復活させたのが今回の高性能工具鋼なのかもしれませんね。
世界最小のボールベアリング結晶体 
先日、その工具鋼の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。ひらたくいえば世界初の本格的ナノマシンが表面に自己組織化されて、滑りが良くなるということだ。
エンジン物理学の革命 
 ワクワク。それでバイクの部品つかえばフリクション最強なんじゃない?
高性能マシンの夜明け 
そのボールベアリング状の物質ってグラファイト層間化合物っていうんでしょ?摩擦試験うちでもやってみようと思います。
インパクト塑性加工屋 
そうだったのか。ハイテン成形のプレス金型に次々と耐かじり性で実績を築いていったS-MAGIC。そのメカニズムが謎だったのだがそういうことだったのか。
まさに最強金属 
しかしながら、固体材料の頂点である工具鋼に自己潤滑性があるとはなんとも無敵な話ですね。
再生可能エネルギーファン 
 私も遅ればせながら、この高性能摺動材料を知りました。なんとPV値が驚異の900MPa/minもあるというものらしいですね。これならばいい風力発電のベアリングなんかができそうだ。
ナノ結晶機械屋 
 なんか文献読んでますと、PV値は900MPa・m/minと表示されていますので気をつけてください。しかし日立安来ハガネの神話思い知らされました。
凄いです。 
 なんか全体最適な設計が可能になりそうですね。
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プロフィール

佐式

Author:佐式
Racing TaSK レーシング タスク/有限会社オフィスタスク 代表の藤野隆司です。

皆さんが、日頃見聞きすることはない/できない情報を提供することで、少しでもお役に立てれば!という思いから、「油屋本舗」を開設いたした次第です。

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